2020年冬、世界的に感染が広がるコロナウイルス。まだまだ終息の兆しがみえない中、ウイルスの感染を防ぐための情報は多く飛び交い、「免疫力アップ」と謳われた商品や方法は今まで以上に注目を浴びることとなりました。フィットネス業界においては、とあるジムでのウイルス感染の報告を受け、営業を縮小または自粛する施設も増えましたが、免疫力を高める方法として推奨される運動は多くの人に実践して欲しいところです。しかし実際は、運動といっても何をやればいいのかわからないと言う人が多いのではないでしょうか。運動は、ただ我武者羅におこなえば良いというものではありません。免疫と運動の関係について誤った解釈をしていると、免疫力を低下させてしまう恐れもあるんです!そんな残念な結果にならないよう、まずはしっかり理解を深めておくことが大切ですよ!
免疫力とは
免疫(めんえき、immunity)というのは実体的な言葉で、感染、病気、あるいは望まれない侵入生物を回避するために十分な生物的防御力を持っている状態を指す。
引用:Wikipedia『免疫』 ttps://ja.wikipedia.org/wiki/免疫_(医学
免疫力とは、自分の意志とは関係なく本能的に、ウイルスや病気から体を守ろうとする力のこと。この力が高いほど、体は良好な健康状態を保つことができ、力が低いほどウイルス等に感染しやすくなったり病気にかかりやすくなります。
ウイルス等の感染を防ぐためにまず思い浮かべるのが、マスク着用やうがい手洗いですが、これはウイルスが体へ侵入するのを防ぐ行為であり免疫力を高めるわけではありません。ウイルスの侵入を防ぎきれずに体内に入ってきた際に、ウイルスと戦う働きが免疫であり、ウイルスと戦う免疫細胞を元気にすることが免疫力アップとなるのです。
免疫の仕組みと免疫細胞
免疫システムは2段階に構成されており、それぞれの役割を担う細胞達がチームとして連携し病原体と戦います。
- 体内に侵入した病原体を、パトロール隊の樹状細胞やマクロファージがいち早く発見
- パトロール隊は攻撃部隊である好中球やNK細胞らに攻撃を指令
- 攻撃部隊が戦っている間にパトロールチームの一部は倒した病原体を連れてリンパ節へ移動
- 特殊部隊の司令塔であるヘルパーT細胞に病原体の情報を伝えて応援を要請
- ヘルパーT細胞は武器産生班のB細胞に抗体の産生を指令、あるいは特殊攻撃班のキラーT細胞に出動を指令
病原体に立ち向かう免疫細胞には寿命があり、加齢に伴い老化してしまいます。この老化を防いで免疫細胞を活性化することが免疫力を高めてヒトの寿命を延ばすことにつながるため、免疫細胞についての研究は多くの機関で熱心に取り組まれています。
その中でも運動は、免疫細胞に影響を与えることがわかっています。
運動による免疫力向上
「適度な運動は免疫力を高める」これはもはや一般常識として多くの人に理解されている情報。適度な運動が免疫力を高める理由として「体温の上昇」や「リフレッシュ効果」が挙げられます。
体温の上昇
いくつもの免疫細胞から成る白血球は血液に含まれているため、体温が低く血行が悪い状態では、動きが鈍くなってしまいます。ですから、体温が上昇し血行が良くなる運動は、免疫細胞の活性化にとても有効的。さらに、筋トレによって筋量を増やして基礎代謝が高まれば、一時的な体温の上昇だけでなく通常時の体温(平熱)も上がるので、免疫力が高い状態を維持することができるのです。
リフレッシュ効果
免疫システムは自律神経の支配を受けているため、自律神経の乱れは免疫細胞の働きの乱れに直結します。自律神経の乱れの原因となるのがストレスですから、運動によるリフレッシュは免疫細胞の活性化を助けるのです。
と、ここまで読んでもらうと日頃から運動している人は免疫力が高くて日頃から運動していない人は免疫力が低いという解釈になりがちですが実は、この説が逆転してしまう場合があるのです!なんとまぁ!
運動による免疫力低下
「適度な運動は免疫力を高める」この情報で注目して欲しいのは「“適度”な運動」です。適度な運動が免疫力を高めるのは、多くの研究で明らかとなっていますが“適度”ではない過度な運動が免疫力を低くすることもまた、研究で明らかとなっているのです!
IGA抗体の減少
IgA抗体とは、粘膜免疫物質のこと。体中のあらゆる粘膜面に存在し、体内に侵入してきた病原体にくっついて無力化させる働きを持ちます。この中でも、唾液中に含まれるIgA抗体の量が過度な運動によって減少すること、それによって上気道感染症を発症しやすくなるということが、様々な競技アスリートを対象とした研究によって明らかとなっています。
過度な運動とは
それでは一体、過度な運動とはどのような運動なのでしょうか。一般的には、マラソンやトレイルランニングのような長時間の高強度運動、またはアスリートの強化合宿レベルを指しますが、実際には個人差があるため一概には言えません。アスリートにとっては高強度に入らない日常的なトレーニングでも、一般人からすると過度な運動に当たるかもしれませんし、習慣としておこなっているジョギングも、全く運動してこなかった人からすると過度な運動に当たるかもしれません。つまり、その人にとってあまり経験したことのないレベルの強度であり、おこなった後に強い疲労感や筋肉痛が現れるような運動が、「過度な運動」と捉えてよいでしょう。
まとめ
運動が免疫力を高めるからといって、今まで何もしていなかった人が急にハードなトレーニングをおこなうのは大変危険な行為です。免疫力を高めるのはあくまでも「適度な運動」。たくさんやれば良いというわけではありません。また日頃から運動を習慣化している人も、予防は絶対的に必要です。運動だけでなく栄養や休養も欠かせません。なるべく疲れを残さない、ストレスを溜めない工夫で、強い体をつくりましょう!
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